【好きと言われたから好きになったのに】

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 初めての告白は中学三年生の時。  その年、私がマネージャーをしているサッカー部に入部してきた一年生が、一緒に部活をしたのは夏の大会が終わるまでの三ヶ月ほどしかなかったはずなのに、卒業式の日に告白しにわざわざ学校に来てくれたのだった。 「ずっと好きで、先輩がサッカー部から居なくなってしまっても忘れること出来なくて、だから、その、卒業おめでとうございます!」  あまりな彼のテンパり具合に、周りに居た女友達は彼の肩を持つ振りをしてからかうように言ったのだった。 「それで? 少年。まさかそれだけ言いにわざわざ、一位年坊主は登校不要な卒業式の日に押し掛けに来たわけじゃあるまい?」  どこの悪代官風情だか、と、かなり呆れて女友達のことも、悪いけど辛うじて名前を覚えていた程度の一年生に対しても、私の心がスッと冷めたのは、自分が同じことをした経験の持ち主だったからだ。 (私がサッカー部のマネージャーになったのは、三年生だった先輩に憧れたからだったんだもん……)  そして卒業式の日、先輩の家の側で待ち伏せていたら、『彼女』と帰ってきた先輩の姿を垣間見てしまい、私の初恋は告白も出来ないまま終わってしまったのだけど。 (玄関先でキスとか、中学一年だった私にはショック大きかったっけ)  そんな私が今度は告白される立場に立つことになるとは。人生って皮肉が利いてるなぁ。  だから私が私の女友達に囲まれ弄られている彼の襟首を掴み、引き寄せるだけで簡単に唇が重なったキスで周囲を黙らせたのは、彼には申し訳ないけれど、二年前の意趣返しのような意味合いでしかなかったのだけど。  でも勢いでもキスしてしまえと思えるくらいには、ルックスは悪くない相手だったから。  そのノリで私は彼と『お付き合い』する関係になった。のだけど。 *    *    *    *    *
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