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だから認めないわけにいかなかった。私はいつしか彼のことが好きになっていたことを。告白してきてくれたのが彼で良かったと思っていたくらい、私にとってすでに彼は特別になっていて。
彼の家にお邪魔するのが嫌だったのは、彼の部屋の中でだけは『カレシ・カノジョ』で居られたから。
私の家まで送ってもらうのが嫌だったのは、この門を境に「先輩・後輩」の間柄になってしまうから。
初恋の人の垣間見てしまったキスシーンなんて、とっくの昔に───きっと彼に勢いでキスした時には氷解していたに決まっていて。
(好きじゃなきゃ……いくら好きだと言われたからって、あんな場面でキスなんか出来ないよね)
顔を真っ赤にして告白してきてくれた、あの頃はまだ背も私と同じくらいしかなかった少年でしかなかった彼に、きっと私は一目惚れしていて。
三年経った今、すっかりと青年になっていたことに、さっき気が付いたくらいの私だ、あの一目惚れから私の今の想いはどのような形になって育ってくれていたのだろう?
けどそれを知る術はもうない。さようならを告げてきた以上、しがみつくだけ不毛でしかないそんな想いに面影を求めるなんて、嘘は本当か分からないけれど、私の受験勉強のために身を引いてくれた彼にも面目立たないから。
泣くのは今日を限りに。
私は明日から、受験生になる。
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