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『ごめーん、風邪ひいたから行けなくなった(´・ω・`)』
『まじかよ。大丈夫?』
『今度埋め合わせするからぁ。』
『わかった。一人で見てくる。身体大事にしなよ?じゃあ、行ってくるね?』
『いってらっしゃーい。』
既読が付いたのを確認して隣を見る。背の高い男の子で童顔だ。何故か黒い画面のスマホをボーっと見ている。そして、何故か気になる。私の勘はよくあたるのだ。だから、もう少しで上映時間だけど、この子の待ち合わせている人が来るまで張ってみよう。自分の勘を信じているっていうのはちょっと可笑しいかもしれないけど、今までそれを信じた結果が尊いものに出会ってきたから私はこの子にも尊いあれの気配を感じる。
「八野、待たせたか?」
八野?八野って誰だ?
「あ、喜一さん。大丈夫ですよ。」
隣の男の子の待ち合わせの人だったらしい。ちらりと横を見ると大変美しい人がいた。黒髪のさらさらヘアーが少し汗ばんだ肌にくっついてエロイ。そして、170センチくらいの身長のスタイルのやたらいい社会人ぽかった。八野というデカい男の子を見て喜一さんは蕩けた笑みをこぼす。
ヤバい。これは、あたりだな。
「ポップコーン買う?」
「はい。買います。あ、チケットはもう買っておきました。一番後ろの席です。」
「ありがとうな。後でお金渡すから。」
「いいです。たまには奢らしてください。その、こぃびとですし。」
ぎゃー!きた!きたぜぇぇぇぇぇ!
そして、私はちょっと意地悪をしようと思った。そして、すぐに行動に移った。
「あの!」
「ん?」
喜一さんが首を傾げる。大変美しいです。
「友達が風邪をひいちゃってこれなくなっちゃったんですよ、その、可哀想な私と一緒に居ませんか?」
嘘は言っていないが、痛いな。我ながら痛い言い方だ。誰が可哀そうだよ。風邪をひいた奴が可哀そうだよ。
「え、あの、喜一さん。」
「うん、八野。ちょっと、落ち着こうな?」
きょろきょろとあたりを見回して焦る八野氏。
あぁ、そういう事。
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