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「……もう一度くらいは行きたかったな」
不意に彼は小さく小さく呟いた。
今までの私に向けての言葉とは違う、ひとりごとを呟いた。
彼の言葉は彼の思いで、欲求で、希望だった。
それが私にとっての絶望だった。
「……ごめんね」
それ以上の言葉が出てこなかった。
叶えられなくてごめんね。
一緒にいてあげられなくてごめんね。
悲しませてごめんね。
辛い思いさせてごめんね。
私のせいだよね。
ごめんね。
本当に、ごめんね。
言いたいことはもっとあったのに、出てきた言葉はたったそれだけ。
まるで彼が私の口を手で押さえているよう。
ただ、温もりは感じられなかった。
彼は手元に視線を落とした。写真に写る私に温かい微笑を向けた。
「どんな思い出もずっと忘れないからな」
色んな所へ遊びに行った。
色んな話をした。
喧嘩する日もあった。
涙を流したこともあった。
でもそれ以上に楽しいこと、嬉しいこと、ドキドキすることがいっぱいで、思い出は笑顔で満ち溢れている。
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