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「私も忘れないよ」
私の瞳から一筋の涙が流れた。
嬉しいのか、悲しいのか、その涙の色は分からない。
ただ、彼のことで泣くのはこれで終わりにしよう。
いつまでも笑顔の私でいたいから。
「じゃあ、私、そろそろ……」
「そういえばこんなこともあったよな。お前が唐揚げを作ってくれて――」
去る前に、もう一度彼に触れたいと思ったけれど、彼は未だに思い出話を続けていた。
楽しそうに、けれど寂しそうに。
両目に涙を溜めながら。
最後まで私の方を向いてくれなかった。
彼が手にする写真には笑顔の私が写っている。
彼の笑顔が愛おしくて、胸が張り裂けそうだったけれど、私は笑った。
私が大好きな彼が、大好きな笑顔で。
決して届かないお別れを。
「さようなら。愛してるよ」
彼の隣に私はいない。
もう二度とあなたに笑顔は見せられない。
だけどこれからは、天国からあなたの笑顔を見守ります。
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