イサナと俺と夏休み

3/76
前へ
/76ページ
次へ
「あー、兄ちゃんお帰り」 汗だくになって家に帰ると、弟の慎吾が一足先に家に帰り着いていた。 「はー!暑い!あ?俺にもよこせよ!」 よく見ると慎吾がニコニコしながら玄関先にジュースのコップを持って、出迎えていた。 「うん、いいよー。これ、やる」 俺より2歳年下で、今年10歳の慎吾は俺よりかなり性格がいい。 これは兄の贔屓目ではない。 お祖母ちゃんもそう言っていたな。 「あたしの孫の中では、慎吾が一番気性がいいもんなぁ」てさ。 俺の心を知ってか知らずが、慎吾は自分のオレンジジュースを俺に譲ると、自分はさっさと台所に行き、新しくジュースを注ぐみたいだった。 俺は弟が羨ましいような、寂しいような、変な気持ちになりながら冷たく冷えたジュースのコップに口をつけた。 「太一、帰ったね?」 「うん」 すると台所のほうからお母さんの声がした。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加