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だけど、俺は納得はしていない。
納得はしていないけど、午後の炎天下、お母さんのママチャリの荷台に段ボールをくくりつけ、慎吾と2人で自転車を押して歩いた。
それにしても、伊佐市の夏は暑い。
鹿児島県なのだから当たり前だが、暑いものは暑い。
いつもなら自転車で15分で着く道のりを30分かけて俺と慎吾は歩いた。
その間、俺たち2人は一切口を利かなかった。
さっきのジュースの件でわだかまりがあったからじゃない。
あまりに暑すぎて、話すだけで体力を消耗して、本当に熱中症になりそうだったからだ。
俺が自転車のハンドを握り、慎吾が後ろから荷台を押す。
2人で段ボールが荷崩れしないように、慎重にバランスを取りながら歩道を歩く。
コンクリートとアスファルトばかりの道を、吹き出す汗を拭いながらひたすらお祖母ちゃんの家を目指す。
どこからか日差しに焼かれた夏草の薫りがする。
だけどまったく風流な気持ちにはなれない。
蝉時雨も暑苦しいだけだし、外を吹く風もドライヤーの熱風みたいだ。
俺たちはヘトヘトになりながらもやっとの思いで、お母さんのお母さんになる秋代お祖母ちゃんの家に到着した。
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