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なんでこの時、その女の子を人魚みたいだと思ったのか、俺にもよくわからない。
ただその子はソファーに腰掛け、窓越しに庭を眺めていた。
庭ではお祖母ちゃんが丹精込めて育てた真っ赤なダリアが、今を盛りに咲き乱れていた。
正直、この炎天下では暑苦しい風景だ。
うん、あんまり見たくない。だって、暑いんだもんな。
いや、話が逸れた。俺が言いたいのは、そういうことではない。
その女の子はソファーではなく、正確にはソファーのひじ掛けにチョコンと座っていた。
その姿が海面に突き出した岩に腰掛けた、人魚を連想させたのかもしれない。
彼女は艶々した光沢のある長い黒髪を指先で耳に掛けると、ゆっくりと俺たちを振り返った。
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