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そのとき、少年がいろいろ説明してくれたんですが、私、混乱していて。あまり覚えていません。
ただ、ああいう道は、どこにでもあるんだそうです。あれは、現実と、そうでないところをつなぐ道だと。あのショッピングモールは、その場所のひとつだということでした。
嗜好品だけを売っている店。生活のにおいのしない店。生活品を、必要としない客。それって、たぶん、生きてないってことですよね。…そういうことですよね。
……。だから、きっと、案内係の女性も、あんなに驚いたんですね。
私、あのとき、いわゆる「地に足がついてない」みたいな人間でしたから。仕事もないし、したいこともないし、なんにもないし。やっぱりそういう状態って、死んでるみたいなものなんでしょうね。それで、『すきま』に、落ちちゃったんでしょうねえ。
もしも、あそこに迷い込んでそのまま、帰ってこれなかったら、…。はい。いま、ここにはいないでしょうね。
…そのあとは、家に帰りました。
山茶花の垣根の路地を出て、いつもの道に着くと、少年は、ぼくはここまで、といって、どこかへ走っていきました。
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