≪エピソード・2≫

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 いとことこの常連である彼の年の差は、自分と彼女よりは近いに違いない。というのが青年の読みだった。少なくとも彼女より上だとは思えない。でも精神年齢がやたら世間慣れしている印象のある彼だけに、そういう意味では彼女と同等、もしくは上かもしれないと思う瞬間がなくもなかった。  最初はただそんな彼に、血縁よりも年の差か、と、少なからずコンプレックスを刺激されたくらいにしか思っていなかった青年だったが、彼女が彼用に話題を用意してきていることに気付いた時、不意に青年は気が付いたのだった。自分は彼に嫉妬している、と。  彼女が彼に語って聞かす話の内容など、実に大したものではなかったが、その大したことない話題で会話を続けられる、その時点で彼女は少なくとも彼とのお喋りを楽しんでいる、つまりは少なからず好意があるということで。  上司の愚痴に始まり、仕事への不平不満、世話の焼ける女友達に、現在進行形で付き合っている彼氏の相談───。  いとこに彼氏が居たということよりも、自分にはそんなこと話してもくれてなかったことにショックを覚えた。加えて彼には当たり前のように相談する様子にも。 (彼女にとって自分は本当に、年下のいとこという存在でしかないんだな)  そう思って認めた瞬間、青年は彼女に対する想いを知って、そのまま失恋したのだった。 *    *    *    *    *    その夜、いつものように二人で店仕舞いをしていた時、青年は彼に尋ねてみた。 「ねぇ。異性から恋の相談されるのって、どんな感じ?」  青年からの唐突な質問に、彼は一瞬だけ目を丸くしてくれるも、すぐにいつもの人懐こい目に戻し、ニヒルに決めるには愛嬌の有りすぎる顔でやや楽しげに答えてくれた。 「恋バナに異性も同性も関係ないっしょ。聞き流す、これが一番の正解ってね。ま、相手がいとこだったらもう少し複雑かもしれないけど?」 「……実はあんたって、本当はヤなやつ?」 「それはとばっちりってもんじゃないの? もしくは八つ当たりとか」 「そこまで判ってるなら付き合ってくれるよね。バーボン、一本くすねてきちゃった。朝までにこれ、空けるから」 「あー───、まさか初恋だったとか言う?」 「どうだろ。本気だったことは確かみたいだけど」 「……そんじゃ、付き合ってやらないわけにいかないわな。朝まで、ね」 【END】
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