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≪エピソード・3≫
いつもより眠りの浅い夜だったのに、目覚めはいつもよりすっきりしていた。
7時にセットされた目覚まし時計は、いつも静かに自分だけを起こす。隣に寝ている彼女は少しだけ、身動きするかしないか程度で。
そっと横目でそれだけ確認すると、シャツを羽織ってダイニングキッチンに出る。洗った顔をさっぱりと吹いたフェイスタオルは椅子の背もたれに。
ホーローのケルトに水を満たして火にかける。その隣でテフロン加工のフライパンで目玉焼きを作る。
冷たい牛乳を一杯のみながら、サラダを誂える。フランスパンとママレードジャムを並べ、コンソメスープを一人分だけよそり、反対側のテーブルにはカップだけを伏せて置いた。
焼き上がった目玉焼きは陶器のお皿へ。朝に果物は欠かせない。これは彼女の受け売りだけれど。
今日はずいぶんと天気がいいようだ。
窓一杯から広く差し込む柔らかい冬の日差しを受けながら、ダイニングテーブルに全てを並べ終え、最後に濃い目に入れたハーブティーを持って席に着く。
満たされた、一人黙ったままの朝の風景。それを虚しいとも不思議とも、思ったことはないけれど。
時計の針は短針は7を少し上回ったところに居て、長針は4より5に近い位置に近付いていた。
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