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元々大人しい性格の彼女ではあったが、グッと笑顔が少なくなった気はする。やはり学校が違うと、心も少しずつ離れてしまうのだろうか……と、少し落ち込んだとき。 ピロリンと慎一のスマホが鳴った。
それは梨花からのメッセージで「ちょっと遅れるね」とのことだった。
いつも早いのに珍しいな、と思いつつも「わかった」と返信をしようとしたとき。
「おい、ニーチャン」
ドスの効いた男の声が聞こえ、慎一に影が落ちた。
見上げればそこには、たちが悪そうな大男が一人、立ちふさがるようにいた。
百八十……いや、下手したら百九十に届くのではないかという体はでかく、圧力を感じる。髪はオールバックで全て撫でつけ、顎髭をたずさえ、サングラスをかけて、首元や手元には趣味の悪いシルバーアクセサリーをじゃらんと揺らしていた。
柄シャツにチノパン姿という、昔のヤクザ映画に出てくる下っ端のような男だった。
「ちょっとこっち来いや」
「え、え?」
まるで狼に首根っこ咥えられたウサギのように、慎一はヤクザ男に制服襟を掴まれて移動させられた。
駐輪場裏の、人気の少ない静かな場所だ。
「で、ニーチャンよぉ!」
「ひぃっ!」
バン! とヤクザ男は慎一の背後にある壁へ片手をつけ、もう片方の手を上に向け慎一の顔の前でヒラヒラさせた。
「金出せや」
「えぇ!?」
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