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その原因は、何も彼女の気弱という内因的要因だけではない。被害者がいるということは当然──加害者がいるのだから。
そしてそれは、数多いる痴漢本人だけではない。無自覚の加害者もいる。
「……で、梨花ちゃん」
「ん?」
「君の彼氏とは、どこのどいつかな?」
にっこりと笑う満の顔を見て、梨花は先ほどの彼のセリフを思い出し口を引きつらせる。
ぶっ飛ばそう──確かに彼は仏のように笑い、そう言っていたのだ。
・ ・ ・
安藤慎一、倉山男子高等学校、同い年の二年生。
梨花と同じ中学だった彼とは、卒業式に告白されたことをきっかけに交際をスタートさせたという。
元ハンドボール部の副キャプテン。優しくて明るく、友人も多いと梨花は語らった。
「優しい男は無神経なことは言わないけどね」
「みーちゃん、男の子には厳しいよねぇ」
今は帰宅中の満と和葉。和葉のご要望で、ショッピングモールの専門店にあるクレープ屋さんに立ち寄ろうと移動中だ。
「俺は女の子の味方なんだよ。それよりもカズ、クレープ屋さんって何階?」
「二階だよ。エスカレーターで行こっか」
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