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開いていた窓からサッカーボールが物凄い速さで廊下に飛び込み、先頭を歩いていた礼二の頭に激しく当たった。
礼二は左側へ体が傾き、そのまま地下につながる階段へと吸い込まれていく。
「礼二っっ!」
そばにいた奏太がとっさに手を出し、礼二の右手首を掴んだ。だが奏太までバランスを崩し二人は真っ逆さまだ。礼二は反射的に左手で手摺をつかみ、奏太と共に階段に尻餅をついた。
はあーと礼二と奏太は同時に息を吐き出す。礼二の心臓はドキドキと早鐘が鳴っており、体がぶるぶる震えていた。
「ちょっと、真鍋たち大丈夫?」
美和が慌ててそばに駆け寄った。
礼二は恐る恐る階段下へ目を向ける。地下は薄暗くなっており、もし頭から落ちていたらと想像するだけで背筋が凍った。
――明日学校休んだ方がいい
――真鍋くんの顔に“嵐”が見えたの!
リンクの必死な声が頭の中で鳴り響く。
違う。偶然だ。偶然が重なっただけだ。占いなんて信じない。そう礼二は何度も自分に言い聞かせた。
「ねえ礼二。今日は保健室で休んでいた方がいいんじゃない?」
「ホントよ、こんな危ない目ばっかりあって」
礼二は笑いながら立ち上がった。まだ足が震えていたが必死で押さえ込む。
「ばっかじゃねーの。大したことねーよ!」
そう言い放つと礼二は教室に向かって走っていった。
しかしリンクの必死な声は、礼二の頭の中で消えることはなかった。
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