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「れーいじ! サッカーしに行こうぜ」
「おうっ」
礼二は親友・峰岸奏太と共に戸口から廊下に出ると、リンクと美和が神妙な面持ちで話をしているのが目に入った。礼二と二人の目線がぶつかる。美和は礼二に向かってべえと舌を出し、リンクはおっとりとした雰囲気で微笑んだ。
「アイツらよくやるよなー。毎日毎日占いなんか」
礼二は右ひざと左ひざでボールを交互に受けながら言った。
「でもさあ、月城さんの占いって本当に当たるらしいよ?」
「奏太、お前まで信じてんのかよ」
奏太が真剣な顔で話し始めた。
「4年生のときも月城さんと同じクラスだったんだけどさ、担任の先生に半年以内に結婚しますって占ってて、本当に結婚したんだよ!」
「いや、それ彼氏がいただけだろ」
「違うって。そんときはいなかったって」
「偶然偶然」
「そうかなぁ~。でもさあ」
「ん?」
「月城さんって結構かわいくね?」
礼二は奏太の思いがけない言葉に動揺し、受け損ねたボールが廊下をコロコロと転がっていく。礼二は慌てて追いかけ、拾い上げながら言った。
「かわいくねーよ、あんなブス」
「そうかなぁ~」
「そうだよ! ほら、早く行くぞっ」
靴に履き替え昇降口から外へ飛び出すと、太陽の強い日差しが降り注ぎ、礼二は思わず目をつぶった。
振り向くと2階の窓際にいるリンクと目が合った。リンクの黒髪は陽光を受けキラキラと輝いている。
リンクがひらひらと手を振った。礼二は顔がカアッと熱くなり、校舎に背を向ける。
「何がお天気占いだ! 俺はぜったいにそんなもん信じねーぞ」と礼二は心の中で叫んだ。
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