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「月城さん……は、そうだ欠席だったわね」
担任の先生が檀上で出席簿を開き、名前を一人一人読み上げていた。
礼二はリンクが休みと聞き、すぐに廊下側の一番後ろの席を見やった。
いつもは女子が群がりわいわいうるさかった場所が、今日はぽつんと穴が開いたように礼二の目には映った。そんな中、先生はいつもと変わらずに次々と名前を呼び続けていた。
――明日学校休んだ方がいい
――真鍋くんの顔に“嵐”が見えたの!
礼二の頭の中では、昨日のリンクの言葉が何度も何度も再生されていたが、その度に「ばかばかしい」と一蹴していた。
「さて、今日の一時間目は図書室で歴史に関する調べものをやってもらいます。みんな静かに移動してくださーい」
「はーい」と元気な返事をしていたものの、児童たちはひそひそと話をしながら移動していた。礼二の目の前にいる美和とその友人も同じである。
「今日、リンクちゃんお休みなんだね」
「お礼言いたかったんだけどな」
「昨日、隣のクラスの笹川くんと一緒に帰れたもんね」
「ちょっと! 声が大きい」
「だから昨日、日直を月城に押し付けて帰ったんだな」
美和とその友人がぎょっとした顔で後ろを振り返った。礼二は眉間に皺を寄せている。
「ひっ、人の話盗み聞くなんてサイテー」
「そーよそーよ」
「うっせえ、声が大きいんだよ。てか人に仕事押し付ける方がサイテーじゃね?」
美和はうっと気まずそうな顔で、隣にいる友人と目を合わせた。
「……悪かったわよ。ごめん」
「謝るなら月城に謝れよ」
「……うん」
美和はいつもの勝気な性格は消え失せ、しょぼんとしていた。
その時だった。
「あぶなーーーーーーーい!」
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