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げこげこぽん
げこげこぽんぽん げこげこぽん
今日の あなたの お天気は?
聞き慣れたリズムが耳から頭に入ってくる。
すぐに「きゃーっ」という女子たちのキンキン声が脳内で響き、近くの席にいた真鍋礼二の片眉がぴくっと動いた。
礼二はため息をつきながら、鋭い視線を廊下側の一番後ろの席に向けた。
「今日のお天気は“晴れ”? やったあー!」
「うん。特に恋愛運がいいよ」
「えー、美和どうすんのよ。リンクちゃんのお天気占い当たるんだよ~」
「ちょっとからかわないでよぉ」
黒髪ロングヘアの月城リンクのまわりに女子が群がり、わいわい盛り上がっている。リンクは“お天気占い”ができるらしく、運勢を占って欲しい女子が集まっているというわけだ。
「あーあ、朝からぴーぴーぎゃーぎゃーうるせーっ」
礼二はその群れに聞こえるようにわざと大声で言い放った。リンクに群がっている女子の目線がこちらに向き、猫が威嚇するように目をギロっとさせている。
「何よ真鍋。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ」
群れの中にいる女子・中山美和が強い口調で言った。
「占いなんか信じるなんてガキじゃねーの」
「はあ? あんたの方がてんでガキじゃない! どうせ今日も給食のメニューのことしか頭にないんでしょ」
そーよそーよと女子たちの声が重なる。
「うっせブス!」
「なんですってー」
美和は顔がかっと赤くなり今にも噴火しそうだ。
礼二はすました顔で、椅子に座って様子を見守っているリンクの方に視線をずらした。リンクはクラスの中で一番背が高く、小学5年生とは思えない程大人びている。怒りっぽい美和とは対照的だ。
リンクは礼二の視線に気が付くと、目を細めて微笑んだ。心臓がドキッと飛び跳ね、礼二はぷいとそっぽを向いた。その間も美和は文句を言い続けていたが、その言葉は礼二の耳に全く入ってこなかった。
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