241人が本棚に入れています
本棚に追加
「……先生」
「何だ?」
振り向いた時、先生の表情はいつもと変わらなかった。
「さっき、大和さんとすれ違いました」
私が何を言おうとしたのか気付いたのだろう。
先生の動きが僅かに止まる。
「先生は付き合ってる人がいるんですか?」
「……何で知りたいんだ?そんな事」
優しい笑みを浮かべる先生。
それは本心を隠しているようで。
「ただの興味です」
「ただの興味本位でプライベートは言いません」
「……振ったの?」
先生は何も言わなかった。
きっと、ちーちゃんの事を思ってだろう。
だからここからは私の一方的な会話だ。
「教師だからとか、生徒としてしか見れないとか言って振ったんじゃないですよね?」
「……だったら何だ?」
「それ、誠実じゃない」
ちーちゃんとは一緒にいたグループが違ったけれど、話はそれなりにした方だと思う。
けれど恋バナなんてした事はない。
いつから先生の事が好きだったかなんて知らない。
けれどアリーちゃんは、きっと先生に恋心を抱いている。
好きだとか告白するだとか話した事はないし、アリーちゃんがそんな行動を起こすなんて想像出来ない。
でも可能性はなくはないと思う。
だからもし同じ状況になったとしても、そんな理由をつけて欲しくなかった。
最初のコメントを投稿しよう!