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「……如月は」
先生が目を細める。
「そうやって物怖じせずに言える所が長所だな」
「短所でもありますけど」
若干ふて腐れると、先生が更に笑った。
「そうやって褒めてくれるのはありがたいよ」
「話をずらしてません?」
「ずらしてないっての。心にとどめて置きます」
「何よ、上から目線で」
「俺は年上だ。ほら、6限に授業入ってんだからさっさと練習しておけ」
結局流されてしまったのか。
なんかズルい。
むくれた顔を隠さずに、準備室に置いてあったイスに座る。
「今日は邪魔します」
「は?」
「誠実じゃなかった罰です。ここに居座ります」
「んな無茶苦茶な……」
呆れ顔の先生を尻目に、私はカバンから雑誌を取り出した。
そんな私を見て諦めたのか、ノートパソコンのキーを叩く音が聞こえ始めた。
パラパラと捲っていると、星座占いのページを見つける。
「先生って誕生日いつですか?」
「12月24日」
思わず顔を上げる。
クリスマスイブが誕生日の人って初めてだ。
なんて覚えやすい。
「めでたいですね」
「どこがだよ」
えーっと、12月24日はやぎ座か。
私と一緒だ。
「金運は良くないみたいです。失せ物注意ですって。恋愛運は○。全体運は普通です」
「俺、運勢とか興味ないんだけど」
「えー?じゃあ最近の流行ってる服とか教えましょうか?」
「だーかーら!雑誌読むなら黙って読んどけ!」
「嫌です。つまんない」
じと、と睨まれたが、邪険にされている訳ではなさそうだ。
先生も私みたいなタイプをあしらうのには慣れていそうだし。
それから5限の途中まで、先生の仕事など気にすることなく私は話し続けた。
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