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「あ、アリーちゃーん!この後皆でご飯行くんだけどどう?」
呼び止められて振り返ると、花音が携帯片手に大きく手を振っていた。
「うん。行きたい」
花音が満面の笑みで私の手を取った。
「おーし!じゃあ早速行こっか!」
「あ、えっと、ちょっと用事を済ませてから行くね。だから先に行ってて?」
花音は首を捻った後、何かに気が付いたのか意味深な笑みを見せた。
「アリーちゃん、ファイト」
何が。
そう言いたかったが、言い返すと更に突っ込んで聞かれそうだったので言葉を飲み込む。
そのままぎゅっと手を握りしめられた後、花音は階段を降りていった。
後ろ姿を見送ってから、私は上の階に視線を向けた。
何度も通った音楽室への道のり。
この階段を上るのも今日で最後だ。
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