偶然か必然か

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「ふー」 学年の会議が終わり、音楽室へと向かう。 二橋高校に赴任して来て早1ヶ月。 あっという間だったな、と伸びをしながら思った。 以前の勤め先は工業高校で男子中心。 まとめるのも一苦労。 音楽に興味がある生徒もちらほらいたが、そのほとんどがギターやドラムなどのバンド関係だった。 まぁ女子生徒よりは気持ちが解る分接し易かったが。 「あ、桜庭先生だ」 「ん?」 廊下を歩いている途中、声を掛けてきたのは3年生の女子生徒だった。 選択授業で音楽を履修している生徒だと言うのはわかるが、さすがにまだ名前が一致しない。 「明日の音楽は何やるの?」 「3年はギターとバイオリンだな。 どっちか選択して実技練習」 「んじゃ、ギターにしよーかな」 バイオリン難しそうだし、と付け加えて笑う。 「じゃーねー」 「気をつけて帰れよ」 「はーい」 今年26歳になる俺はこの学校でも一番年が下。 声を掛けやすいのは良いことなんだろう。
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