偶然か必然か

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音楽室へ向かう階段を上っていてふと顔を上げる。 「(誰かいるのか?)」 音楽室から漏れる音……いや声。 よく聞けばオペラだった。 「(歌って……)」 CDから流れる声と重なって聞こえるソプラノ。 かなり上手い。 この学校には吹奏楽部しか音楽系の部活はなく、かく言う自分も吹奏楽部の顧問になっていた。 まぁ顧問と言っても第2顧問。 メインの顧問の先生は中学から大学まで吹奏楽でクラリネット奏者をしており、指導の面でも長けているので任せっきりだ。 人手がいる行事くらいしか駆り出されないだろう。 音楽室の扉の前に立ち耳を澄ます。   ビブラートはまだ甘いし、息継ぎも雑だ。 けれど伸びやかで力強い。 高音域になればなるほど凄みが出る。 「(う、わ……)」 思わず声が出そうになった。 音大出身なのもあり、今までたくさんの歌声に触れてきた。 それでも聴き入らずにはいられない。 そんな歌声だ。
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