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エリオットの手元のカルテを軽く確認し、まとめて机の横に置いたリカルドは丁寧に返して机のランプを落とした。薄暗くなった室内。帰れと、強制的に言われているのだろう。
立ち上がったエリオットはそのまま、自室へと戻っていった。
「凄い先生だね、リカルド先生って」
部屋に戻ってみると、当然のようにオスカルが待っていた。今はエリオットの部屋で、先程の話をしている。
「でも、確かにエリオットは働き過ぎだからね。僕としては助かるかな」
「そんなにですか?」
「自分の顔色見て言ってる? 本当に、医者の不養生だよ」
溜息をつくオスカルは、次に笑みを浮かべる。そしてするりとエリオットの顎を撫でた。
「陛下の婚礼が終わったら動ける。そうしたら、僕と行って欲しい場所があるんだけど、いい?」
「どこですか?」
触れる手がとても温かくて気持ちがいい。体が冷えていたのだろうか。
「エリオットの、お母さんにご挨拶」
「!」
驚いて目を見開いていると、その前に一つの箱が差し出された。妙にドキドキする。その箱を、オスカルは丁寧に開ける。
中に納まっていたのは、シンプルな銀の指輪だった。互いの瞳の色の宝石が入っている。
「婚約指輪だけど、お揃いが良かったから僕のはおまけ」
「こんな、いつ……」
「君が西で忙しくしている時に」
「そんな!」
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