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ベッドに優しく押し倒されながら、浅いキスを繰り返す。もどかしいのに期待が膨らむ。望んでいるのはこの先にある熱情。少しずつ深くなるキスに、鼓動は勝手に早くなる。
「期待しているのか?」
「いけませんか?」
「明日は休まないのだろ?」
「……体によります」
受け止める気持ちが理性を上回っていく。分かっている、きっと明日なんだかんだと後悔する。「あの時どうしてセーブ出来なかったのか」とか、「恥ずかしくて死にそうだ」とか。
でもそれを含め、今の衝動にか敵わない。それに結局許してしまうし、これは照れ隠しだから。
腕が背に回り、きつく抱き寄せてくる。手が髪を混ぜ、ただ互いの体温を感じて居る。
「どうしたのですか?」
「……生きていてくれて良かった。正直、生きた心地がしなかった」
震えている事に気付く。あの後、意識を取り戻してもクラウルはなかなか離れようとしなかった。ファウストがリリーの屋敷から動けず、現場の処理をしなければならないというのに。
いけないのだろうが、嬉しくは思った。思って貰える事、泣いてくれること。握った手がずっと震えていた。安堵した時、一滴だけ涙がこぼれたのを知っている。
背に手を回して、きつく抱き寄せた。やはりこの人が好きなんだと、思い知った。それは日増しに確かになっていく。
「貴方がついているのです、死にませんよ」
「あのままなら危なかった」
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