3階角部屋

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
まだ実家暮らしだった頃、とある工場勤務だった私は月~金で20時から3時まで働いて、毎日午前3時半頃に帰宅するという生活を送っていた。 土日が休みで、その時期は決まってTという友達と遊んでいた。Tは友人が「面白い奴に会わせる」と言って飲みの席に連れてきた同じく工場勤務の男で、ほんとに面白くてやけにウマが合った。 Tも似たような労働環境で土日休み。私と生活のサイクルがほぼ同じで、よっぽど何かなければ休みの日は十中八九、一緒に居た。 私も自分の車を持っていたが、Tが車で実家まで私を迎えに来て、一台で遊びに繰り出して帰りは送ってくれるというサイクルが完全に出来ていて、日頃の生活が染み付いてしまっているのか、帰宅するのは大体が午前3時半頃。 ある日、いつものように遊び帰りに家まで送り届けてくれたTが窓の外を指差してこんなことを言った。 「あのさ、3階の角部屋、いっつも電気ついてない?」 そう言われると、確かにそうだ……全く意識してなかったようでいて、改めて言葉にされると“あそこは絶対に電気がついている”という認識が自分にもきちんとある事に気付く。 「あと、1階から8階までで、あの部屋だけ何故かカーテン付けてないじゃん。ちょっと前にそれに気付いてなんか気持ち悪く思えてさ。」 私の実家は道を挟んで目の前にある8階建てマンションの側面に面していて、玄関の前に停車すると、下から上まで角部屋の窓が見える。 ……意識し始めた途端、不気味に感じてくる。 「今お前が言うまでまともに見てなかったけど、よく見てみると窓際に生活感が全然ないよな。」 「そう。そうなんだよ、誰も住んでない部屋に電気だけついてるみたいな。」 その日を境に、仕事から家に帰ってくる度、3階の角部屋を意識して見てしまうようになった。3階というのが微妙な高さで、下から見上げると窓と天井の感じくらいしかわからない。 そして次の休みの日。いつものようにTと出掛け、送ってもらうと、よほど気になるのかTは私の家の前に車を停めたまま、またあの部屋をジッと見ている。 「先週、お前があんなこと言うから気になりだしちゃって、毎日様子伺ってるわ俺。別に何が起きるわけでもないんだけど。」 「……あっ、見て、おばあちゃん。おばあちゃん居る。」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!