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受験勉強を夜遅くまでしていた僕は、ふとアイスでも食べたくなりコンビニへ出かけた。
一階に下りると家の中は完全な静寂で、みんな寝ているようだった。
真夏とはいえ深夜、外へ出てみると意外にも涼しく、気分転換に歩いていくことに決めた。
都会の人には信じられないかもしれないが、最寄りのコンビニまでは1キロ、しかも道の周りはほとんど林だ。
オレンジ色の街灯はところどころ切れかけていて、聞こえるのは木の枝が風に揺られる音だけ……音だけ?
ぼん。
大きなゴムタイヤを蹴った時のような、鈍い音が聞こえたような気がした。
ぼん、ぼん。
やはり聞こえた。
街灯の当たっていない林の中は、違う世界のように真っ暗だ。
僕はその、違う世界の見えない生き物に引っ張られるように、いつの間にか林の中へ足を踏み入れていた。
そして、彼女と出会った。
彼女の第一印象は、”涼しげ”だった。
白く透き通った腕は真っ赤に濡れ、かきあげた髪は乾いた血でパリパリと音を立てた。
そんな状況でも、ただの海水浴中のワンシーンと錯覚するほど清々しかった。
「こっちに来ないほうがいいよ」
明るく透き通った声で彼女は言った。
「見たくもないものを見ちゃうよ」
我に返った僕は、ここは殺人現場なのだと再認識した。
「もしかして……死体?」
「YES」
そこから僕たちの問答は始まった。
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