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「あなたが殺したの?」
「YES」
「ど、どうして?」
彼女は腕を組んで少し考えたのち、こう答えた。
「なんのきまぐれかな、質問に答えてあげる気になっちゃった。でも、答えるのはYESかNOで答えられる質問だけにしよう」
僕が言葉を探していると、彼女は続けた。
「私から逃げるつもりがないなら、少しそっちに行ってもいい?なんか座りやすそうな木があるし、それに」
彼女は斜め後ろの方を一瞥し、舌を出して吐く真似をした。
「ここからの景色は最悪」
倒れた木に2人で並んで座ると、彼女は伸びをした。
なぜ僕は殺人犯と並んで座って、さらにその殺した詳細について質問をしようとしているのだろう?奇妙な話だ。
「お姉さん、もしかして乱暴されたの?」
「乱暴?NOだね。確かに相手は男だったけど……おっとヒントをあげちゃった」
「じゃあ、恨みがあった?」
「NO」
「じゃあどうして」
そう言いかけたところで、彼女がニヤリとしたのがわかった。
「YESかNOかで」
僕は考え込んだ。そこが一番の謎なのだ。でも今はとりあえず、分かりやすそうなところから聞いてみよう。
「さっきの音、殴った時の音?」
「YES。いやな音聞かせちゃったね」
そういえば凶器はどこにあるんだろう。
「バットで殴った?」
「NO。何で殴ったかは、重要じゃない」
彼女の細くて白い腕で男を殴り殺したなら、凶器がなんなのか気にはなるけど。
「男は知り合いなの?」
「NO」
「道をたまたま歩いていた人を殺した?」
「NO」
「ええっ」
どういうことなのだ。
「誰かに依頼されて……?」
「そんな殺し屋みたいな!NOだよ。私の意思で殺した」
「さすがに会ったことはある?」
「NO、今日が初めましてだね」
「もしかして、男は指名手配の極悪人だったとか?」
「うーん……指名手配ではない。でも、悪い奴だったよ」
「悪い奴だから殺した?」
「YES。真相にたどり着いたね」
「全然だよ!」
まだまだ、問答は続きそうだ。
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