ウミガメのスープ

6/7
前へ
/7ページ
次へ
「じゃあ、女の子本人が通報した?」 「それも違うと思う」 こういう時は、質問の方向性がそもそも間違っている可能性がある。 「今までの登場人物以外が通報した可能性が高い?」 「YES」 「それを特定するのは難しい?」 「YES」 つまり…… 「警察に通報があったのは、この件とは別?」 「YES」 「あなたは、他にも罪を犯した?」 「YES」 「殺人?」 「YES」 「それは、あなたが恨んでる人を殺した?」 「YES」 「よくわからないけど、それがこの男を殺した動機の一部?」 「YES」 「もともと計画していたのは、一つ目の殺人?」 「YES」 「どうせ捕まるなら、友達の父親も同じ日に殺すことにした……?」 「YES。それが真相だよ」 彼女はすーはー、すーはー、と二回深呼吸をし、立ち上がった。 「そこで死んでる男は、私の友達にひどいことをした」 「……」 「私の父親も、根っこのところではおんなじようなやつ。ひどいよね?こんな小さな村に、悪党が二人もいたんだよ」 「……」 「私は死ぬまで耐えようかとも思った。でも、そこで友達の相談を受けて、そっちはどうしても許せなかった」 「……」 「なにより、行動を起こさなかったら」 「……」 「友達が先に罪を犯してしまうかも」 「……」 「あの男を殺すか、もしかすると自分自身を殺してしまうかも。それが怖かった」 「……」 彼女は今日、二つの憂いを、怖れを自ら断ち切った。それが彼女に”涼しげ”という印象を与えたのかもしれない。 「じゃあ、またね」 「……待って!」 振り返ると、彼女はいなかった。 「……またね、っていうのはおかしい気がする」 誰もいない林に向かって、僕はつぶやいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加