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「じゃあ、女の子本人が通報した?」
「それも違うと思う」
こういう時は、質問の方向性がそもそも間違っている可能性がある。
「今までの登場人物以外が通報した可能性が高い?」
「YES」
「それを特定するのは難しい?」
「YES」
つまり……
「警察に通報があったのは、この件とは別?」
「YES」
「あなたは、他にも罪を犯した?」
「YES」
「殺人?」
「YES」
「それは、あなたが恨んでる人を殺した?」
「YES」
「よくわからないけど、それがこの男を殺した動機の一部?」
「YES」
「もともと計画していたのは、一つ目の殺人?」
「YES」
「どうせ捕まるなら、友達の父親も同じ日に殺すことにした……?」
「YES。それが真相だよ」
彼女はすーはー、すーはー、と二回深呼吸をし、立ち上がった。
「そこで死んでる男は、私の友達にひどいことをした」
「……」
「私の父親も、根っこのところではおんなじようなやつ。ひどいよね?こんな小さな村に、悪党が二人もいたんだよ」
「……」
「私は死ぬまで耐えようかとも思った。でも、そこで友達の相談を受けて、そっちはどうしても許せなかった」
「……」
「なにより、行動を起こさなかったら」
「……」
「友達が先に罪を犯してしまうかも」
「……」
「あの男を殺すか、もしかすると自分自身を殺してしまうかも。それが怖かった」
「……」
彼女は今日、二つの憂いを、怖れを自ら断ち切った。それが彼女に”涼しげ”という印象を与えたのかもしれない。
「じゃあ、またね」
「……待って!」
振り返ると、彼女はいなかった。
「……またね、っていうのはおかしい気がする」
誰もいない林に向かって、僕はつぶやいた。
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