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泣きたくなんて、無い。
涙を見せるキャラじゃない。
先生を困らせるくらいなら、涙なんて、流したくない。
笑えている自信は無いけど、いつものように「好き。大好き」と、精一杯の笑顔で、先生へと、告げた。
「あー、もう、本当」
「?」
カタン、と席を立った先生が、ガシガシ、と頭をかきながら、近づいてくる。
「お前、こっちが、必死に抑えてるのに、全っ然、気づいて無いだろ?」
「……へ?」
古典準備室には、窓がない。
あるのは、廊下の高い位置の明り取りと、入り口のドア。
だけど、先生は、教材が日に焼けるのを嫌がって、いつもドアの窓にはカーテンをしている。
トン、と私の顔の横を通って、先生の腕が壁につく。
「先せ」
「あと一週間だ」
一週間。
それは、侑ちゃん先生と、森山先生が、学校から居なくなるまでの、残された時間。
私と、莉夏に残された、約168時間。
「一週間経ったら、お前がイヤってくらい、言葉にしてやるから」
「え、それって」
「それまで、良い子で待ってろ」
そう言った侑ちゃん先生の顔が、ゆっくりと近づいてくる。
ーーキスされる……?!
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