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第6章 女剣士登場。
陣取り合戦を、三回戦まで勝ち残り。一対一の対決戦に挑む26人の中に、一人異彩を放つ選手がいた。
陣取り合戦の時は、そんな選手は居なかった。
全身を鮮やかに赤く染めた、金属の鎧に包み、青い羽飾りの付いた兜を被り、自身の背丈より長い、長剣を背負っていた。
多分四回戦が始まる前に、着替えたのだろう。
四回戦からは、一対一だから目立つ格好に着替える選手は、ザラだった。
とは言っても、其の選手が他の選手より、一回り小さいから余計目を引く。
予選四回戦からは、一対一の対人戦。武器は王宮が貸す木製の武器。大概が長剣か、槍を使って仕合う。
中には、特殊な武器を使う選手もいるが、その場合は、刃の部分を木製に変える。
其の選手は、持っていた長剣を審判に預けて、木製の槍を受け取った。
一対一の対決なので、対峙した選手達は、名乗り合うのが仕来たりになっていた。
大体が、何処何処道場の何の某、又は、何処何処村の何の何ベェ。
王宮の御前試合で良い試合、または、優勝すれば、村の誉れ道場の誉れ。
特に町道場は名前を売る、絶好の機会。
出場する選手も、だんだん派手になる。
其の赤い鎧の選手が、出場した。
先ず相手をする選手が、名乗りを挙げた。
王都の、一番大きい道場の、剣士だ。
「ニオ道場の一番戦士、荒馬のラゴウ!」
そして、赤い鎧の選手。
「キナ村の戦士、アイン。」
凛とした声が、武闘会場に響きわたる。
会場が一時シンと静になり、そしてザワザワと沸き出した。
「キナ村のアインて言ったら‥‥‥‥、」
誰かが囁やいた。
去年、西の国境扮装で、進行してきたローデン軍をキナ村出身の警備兵が僅か一個中隊で、ローデン軍を追い返した。
その時の中隊長が、アイン。
別名、赤い星のアイン。
「試合開始!」
審判の掛け声が上がった。
「カーン!」
同時に乾いた衝撃音が、会場中に響きわたる。
ラゴウの体が宙に舞う。ドオンと地響きが其のあとに続いた。
「勝者、アイン!」
審判の宣言で、試合は決した。
そして、アインはゆっくりと、兜を脱いだ。
長い黒髪をたなびかせ、真っ赤な紅を引いた唇が観衆を魅了した。
「ウオーーッ!」
其の瞬間、試合会場が沸き上がった。
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