歌詞カードのThanks欄

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 また、上記SNSのフォロワーのリスト(ツボッターは何と601,203人もいた)の名前を全て表計算ソフトに張り付け、検索を掛けたが、クレメンタインという名前のユーザーは一人もいなかった。  別名義でフォローしており、自ページで惚気話を繰り広げて顰蹙を買っている可能性はあるが、もし一目見てクラウスとイチャコラしているならば、たった一つの不適切な書き込みから住所に職業まで暴かれるご時世だ、即座に拡散されているだろう。これもなしだ。エースブックに関しては本名で登録しなければならないので、これもなしだ。    ネットではだめだったので、私はアナログな手段に出た。すなわち、雑誌を買い込んだ。  定期購読している辛口批評ライターで有名な音楽雑誌のみならず、他に5冊、たまにしか読まない雑誌にも目を通すことに決めた。ネット通販では届くのが遅すぎるので、市内の大きな書店まで足を延ばす。  今どき紙媒体などといって侮ることなかれ、意外にインターネットには出てこない情報が載っていたりするのだ。    2時間かかって隅々まで読破した。こんなに読書したのは久しぶりだ。  結論から言うと、釣りでいうボウズというやつであった。  Revontuletのアルバムの評価(バンド独自のサウンドの確立という煽り文句と共に92点が付けられていたので、私は大満足した)、メンバーの写真つきのインタビュー(ああクラウス……彼の少し首を傾げたときの横顔は本当にセクシーだ)はいずれの雑誌にも載っていたが、やはり肝心のクレメンタインは出てこない。クも出てこない。インタビュアーの名前や写真撮影担当者もチェックしたが、そういう名前ではなかった。
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