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ネットもだめ、本もだめ、こうなったら、たった一つの確かな情報――クレメンタインという名前そのものから考察することにした。
クレメンタイン、英語圏の女の名前だ。ということは、件の女は現地住民ではない。
ツアー先で知り合った相手だとしよう。私は素早く、過去Revontuletが北欧外でライブをした場所を思い起こす。20x3年6月イギリスバーミンガム、8月ドイツヴァッケン、20x4年2月……
いや、待った。フィンランドに移住してきた英語圏出身、もしくはその親を持つ女という可能性も否定できない。
いや、そもそもクレメンタインは本名でないのかも知れない。例えば、愛する彼氏を東の方から追ってきた某荒野の決闘になぞらえて、詩的なクラウスはクレメンタインと呼んでいる可能性がある。その場合は、ヴァンターよりも東の都市出身で……
だめだ、頭が爆発する。可能性ばかり指数関数的に増えていく。一つずつ条件を潰していくにしても、多すぎる。現実的ではない。
ちくしょう、クレメンタイン……一体何者なんだ。
真面目で堅物な彼をたぶらかし、バンドを破滅に追い込まんとしているこの悪女は。 早く、奴の素性を暴かねば――!
「ああああああああああ!」
「小杉! 何小テスト中に発狂してんだ。そんなに難しかったか、ええ!?」
額に黒板方向から飛来してきたチョークが直撃したので、私の探偵事務所は一旦終業となった。
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