真実のナイフ

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真実のナイフ

智花は思った。 私に罪があるのは分かってる。生まれつき容姿も地味で、しかも人見知りで、加えて人前だと舌が引きつってうまく話せない。それが周囲にもよく伝わる。顔はそれなりに可愛いほうだとは思うけど、とにかく陰のある印象を回りに振りまいてしまう。自分から友達を作るなんて出来ない。でも孤独を良しとする態度もとれない。臆病だから。そんな自分と友達になってくれる女には感謝すべきなのだろう。 智花は今年で二十六になる。 彼女には結婚を考えていた恋人がいた。いた、というのは、その男を一年前に奪われたからだ。いや違う、奪われたのではない、彼はその女のことが好きになったのだ。心変わり、どうしようもなかった。 でも意識で自分の罪を思っても、本心を誤魔化すことは出来なかった。失恋した直後は、その女に対する憎悪、殺意が日々煮えたぎった。 その女は智花の友達だった。名前は美絵。高校を卒業してからの、同じ勤め先で知り合って以来、ずっと。 美絵は名前の通り綺麗な女だった。しかも性的な魅力も兼ね備えた、男が放っておくわけもない女。     
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