ドライブスルー

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ドライブスルー

 仕事からの帰りがけ、自炊が面倒なのでたまにはいいかと、帰り道にあるファストフード店を利用することにした。  ドライブスルーのある店で、降りるのが面倒だったから、迷わずそれを利用した。  車内で注文した品ができるのを待っていたら、後ろに一台の車が入ってきた。けれど後続車は一向に注文をする様子がない。  店員が注文を聞く声がスピーカー越しに俺にまで聞こえてくる。それでも後ろの車が応じる様子はない。  いったい後ろの奴は何をしているんだろう。  不審に思いバックミラーで後続車を窺った俺の視界に映ったのは人のいない車内だった。  後ろに停まった車から人が降りれば、音や気配で確実に判る。でも、後ろの車から人が降りた様子はまるでなかった。  暫くして、様子がおかしいと思ったらしき店員が後ろの車を覗きに来た。でも車内を見た直後、店員は首を傾げながらこちらに歩いて来たのだ。 「あの…すみません。後ろのお客さん、降りてどこかへ行かれましたか?」 「いや、誰も降りたりはしてないですよ」 「えぇっ?!」 「…人、乗ってないんですか?」  俺の問いに店員の顔が真っ青になる。でも顔色を変える羽目になったのは店員だけではなかった。  さっきまで無言を貫いていた後ろの車から、スピーカーに向けて注文をする声が響き渡ったのだ。  店員は動転して店内に駆け込み、俺は注文した商品など放置してそのまま店を離れたから後のことは知らない。  家に帰ってから、もしや後ろの車の奴と店員がぐるで仕掛けたいたずらにひっかかたのかもと考えたが、注文品は受け取ってないものの、 こちらもまだ会計前だったから特に何を損した訳でもないので、それならそれでいいかと思っている。  そう、本当に無人の車がドライブスルーにやって来た。そんな事実よりはいたずらの方がよっぽどいいよ。 ドライブスルー…完
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