Ⅱ.過去の残照

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 目の前には、ひたすら荒れ地が広がっている。  一木一草生えることの無い荒れ地、ここが昔集落だったと言われてもライカは信じられなかった。  ライカは光神……大主(たいしゅ)エルト・ディーワに使える婀将軍(あしょうぐん)である。  大主よりとある命を受けて、この光と闇の領域の境界にやって来た。 「これが、虚魔が通った跡です」  背後からの声に、彼女は振り向いた。いつの間にかそこには漆黒のマントを羽織り、頭からフードを被った武人が立っていた。  案内役として同行しているこの人は、元々は闇の領域の住人である。 「光と闇がいがみ合う前は、二つの領域を繋ぐ宿場として賑わっていたそうですよ。……もっとも自分が物心ついた頃には、もう廃墟になっていたようですが」 「じゃあ、不幸中の幸い、だった訳ね。それにしても……」  言いながら、ライカは再び荒れ地に視線をめぐらせる。 「こんなところに、本当にいるんですか? その……大主が探してるって人は」  そう。  彼らは、とある人物の探索のため、この光と闇の境界の地に来ていた。  尋ね人の名は、カイ・ベルグ。他でもない、大主の弟に当たる存在だ。  古の闇の王べヌスが少年王月光を依代とし蘇った時、カイは先の烈将軍(れつしょうぐん)フェルドや婀将軍ラダ、そしてライカと同行する翡影(ひかげ)と共にそれを封じた。
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