Ⅱ.過去の残照

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 その後彼は、『調和者』を探すと言い残し、単身『狭間』を目指し旅立った。  神と呼ばれる長命種の幼子が、成人する程の時間が流れた。  その間に短命種である人間は、幾世代かを重ねた。  闇の領域で起きた出来事は、忘却の彼方へ消えいこうとしていた。  フェルドはその位を成長したリーアスに譲り、今度は政の面から大主を補佐することとなった。  彼らに救われた闇の巫女は、いつしかその姿を消していた。  ラダの退役後長らく空位となっていた婀将軍の位に遠縁のライカが就いたのは、季節が移り変わる前のことだった。  闇の領域では、王に代わって民を導くことを余儀なくされた月光の妹姫白夜が成人し、名実ともに代王となった。  引き続き補佐役を務める右将軍黒雷(こくらい)は、闇の領域内に鋭い目を光らせ、白夜の地位を確たる物にしたという。  一方、月光と白夜の叔父に当たる大公の薄暮は、表舞台から退き居城でひっそりと暮らしているという。  いずれにせよ、闇の領域には、光に対抗し得る力は失われたかに見えた。  大主がライカに弟の探査を命じたのは、そんな時だった。  未だ経験の浅いライカにあまりにも荷が重い、そうフェルドはやんわりと異を唱えた。
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