Ⅱ.過去の残照

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 陣は、闇の領域からの襲撃を受けている。  皆を助けなければ、と走り出そうとするライカの腕を、翡影は咄嗟に掴んでいた。 「ちょ、どうして止めるんです? 早く行かないとみんなが……」  けれど、翡影は首を左右に振った。 「ここからだと、相手の数がわかりません。下手をすれば、我々も含めて全滅するだけです」  そう。  今回の目的は、あくまでも大主の弟の探索であって、戦闘ではない。  ここはやり過ごし、一旦大主の元へ帰還するべきだ、そうライカに進言する。  翡影にとっても、苦渋の決断だった。  だが、ライカは翡影の手を振り払った。  予想外のライカの行動に、翡影は目を丸くする。  その間にもライカは剣を手に走り出していた。 「ライカ殿! お待ちください! 」  大声でライカの背に向け呼びかけるが、彼女は止まろうとしない。  そうこうする内に、ライカの姿は、陣の中へ消えていく。  まずいことになった。  翡影は被っていたフードを跳ね上げ、自らも剣を抜きライカの後を追おうとする。  その時だった。  翡影の脇を、一尋の風が吹き抜ける。  その風に乗って、かすかな声が聞こえた。 ──将軍、ここは私に一任を── 「……な? 」  思いもよらぬことに、翡影は周囲を見回す。
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