Ⅱ.過去の残照

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 不意に斬りかかってきた闇の領域の戦士を、ライカはすんでのところで避けた。  肩口の衣が裂け、わずかに血がにじむ。  けれど、不思議にも痛みを感じることはなかった。 「こんな少人数で、しかもガキを連れて来るとは、舐めた真似しやがって……」  怒りに燃える視線を向けられて、ライカは思わず後ずさる。  けれど、大主に使える婀将軍として、この場を退く訳にはいかない。 「……先程も申し上げた通りです。我々は、人を探しに……」  再度、ライカは説得を試みる。  だが、闇の戦士は狂気に満ちた視線をライカに向け、大上段に剣を構え振り下ろそうとした。  殺られる。  思わずライカは固く目を閉じる。  そのまま凍りつくように立ち尽くすこと、しばし。  予想に反して、その時は訪れなかった。  恐る恐る、彼女は目を開く。  と、周囲は灰色の霧に包まれている。  争いあっていた人々は、突然のことに等しく辺りを見回している。  その時、霧に乗って不思議な声が聞こえてきた。 ──我が墓所を荒らし、あまつさえ血で汚す者は何者ぞ? 恐れを知らぬ者、贖いの準備は良いか? ──  その言葉が一体何を意味しているのか、ライカにはわからない。  けれど、闇の戦士達は等しく青ざめ口々に言う。
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