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「……闇の巫女の呪いだ……! 」
「逃げろ! アウロラに取り殺される! 」
そして、こちらを省みることなく逃げ帰っていく。
いつしか霧は晴れ、何事も無かったかのような静けさが戻る。
「皆、無事ですか? 被害状況は? 」
我に返ったライカは、慌てて周囲に声をかける。
程なくして、こちらは怪我人こそ出たがいずれも軽症で、犠牲者はいない、との報告が上がってきた。
ほっと彼女が胸を撫で下ろした時、翡影が姿を現した。
それを認めたライカの目から、ぼろぼろとなみだがこぼれ落ちる。
同時に、ぺたりと大地に座り込んでいた。
「どうしました、婀将軍ともあろう方が……」
「ごめんなさい……でも……」
対人の戦闘を経験したことのないライカである。
当然のことだろう。
「謝らなければならないのは、自分の方です。ここは闇の領域に近い。もっと警戒するべきでした」
言いながら、翡影は皆に向け深々と頭を下げる。
「お手をお上げください。翡影殿のせいではありません」
「元はといえば、我々の気の緩みが招いたこと」
そう言われてもなお済まなそうにしている翡影に、ライカは立ち上がりながらある疑問を投げかけた。
「あの霧は、もしかして翡影さんが? 」
瞬間、翡影の表情がわずかに強張った。
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