Ⅱ.過去の残照

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「アウロラというのは、闇の王に使えていた巫女の名です。裏切り者の濡れ衣を着せられて……」  彼方には闇の王の居城を望むことができ、大主の本陣からも見通せるこの高台で、彼女は闘いを止めることができなかった非力な自分を嘆きながら、自らの命を絶ったという。  そう聞かされて、ライカは改めて地面に置かれた花を見つめる。 「じゃあ、アウロラって人のお墓、陣のそばにあったんですか? 」  だが、翡影は首を左右に振った。 「そこまではわかりません。何せ、裏切り者として伝わっているくらいなので……。もしかしたら、そのまま打ち捨てられていたかもしれません」 「でも、誰かが今も悼んで守っているんですね。だって、こんなに綺麗なお花をお供えしてるんだもん……」  だが、翡影は違和感を覚えていた。  少なくとも、彼が闇の領域にいた頃には、アウロラの存在は口に出すのもはばかられるものだった。  それは、時が流れた今も変わってはいないだろう。  にも関わらず、この供え物である。  古の闇の巫女を悼み、かつ自分を将軍と呼び、そしてあれだけの人数を一瞬にして幻術にかけることができる人物は、確かにいる。  深い思考に沈んでいく翡影の頭上を、ライカの声が流れていく。
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