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主に闇の領域で、肥沃な農地や集落はたまた里山に至るまで一夜にして荒れ地となる、『虚魔』と呼ばれる現象が起きている、と。
よもやそのようなことが、と疑っていたのだが、実際足元には生きとし生けるものの存在を否定するような荒れ地が広がっている。
これが、虚魔がすべてを飲み込んだ跡なのか。
だとしたら、調和者が住まうという狭間はもう……。
脳裏に浮かんだ考えを、カイは慌てて振り落とす。
少なくとも、闇の領域で起きたあの悲劇の頃までは存在している、そう彼は確信していた。
その根拠となっているのは、常闇の中から救い出された幼い巫女の言葉である。
彼女は夢と現の間で狭間に迷い込み、調和者に会ったという。
おそらく、彼女が持って生まれた能力のなせる技だったのだろう。
けれど、たどり着けた以上は、必ずどこかに入口はあるはずだ。
それにしても。
彼は上空を仰ぎ見た。
空はどこまでも高く澄み渡り、雲一つ見当たらない。
ちょうど地平の彼方へ日が沈もうとし、反対側の地平からは月が上ろうとしている。
昼でも夜でもない時間。
そう、まさに光と闇との狭間。
そう気がついた時だった。
光と闇が入り混じった空が、不意に迫ってくる。
混沌に呑み込まれる。
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