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再びカイは、剣の切っ先を左腕に突き立てようとする。
けれど。
ある事を思い立ち、カイは剣を鞘に収めた。
そのまま、迫ってくる混沌とした空を睨みつける。
広大な空が落ちてくる。
そして、いつしか夜が訪れた。
月明かりに照らされた荒れ地には、動くものは見られなかった。
*
頬をなでる柔らかな風に、カイは目を覚した。
倒れていたのは、先程の荒れ地ではなく、石畳の上だった。
静かに身を起こす。
そして片膝を立てた姿勢で、周囲の様子をうかがう。
上空には、日も月も星すらもない。
ただただ、昼でも夜でもない、混沌とした空が広がっている。
自分以外、動くものの気配は感じられない。
あるのは、朽ちて折れかかっている木々ばかりである。
用心深く彼は立ち上がる。
まとわりついてくる空気は重く、もう長いこと動いていないようだった。
明らかにここは、今まで彼が彷徨っていた世界ではない。
可能性は、二つ。
一つは、彼が目指していた調和者が住まうという狭間。
もう一つは、あまり来たくはないがいわゆる死後の世界。
さて、どちらだろうか。
いずれにせよ、ここに留まっていては答は出ない。
意を決して、カイは未知の空間へ向け足を踏み出した。
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