Ⅰ.狭間

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      *  月も日もないこの世界では、どれくらい時が流れたのかわからない。  加えて、自分がどこに向かって歩いてるのかさえ定かではない。  似たような風景が延々と続く中、果たして前に進んでいるのか、後戻りしているのか、はたまた同じところを周回しているのかすらもわからない。  せめて、何か目的になる物がないのか。  一度足を止め、大きく息をつく。  そして、カイは改めて周囲を見回す。  辺りはしんと静まり返り、その静けさは耳に痛いくらいだった。 「……え? 」  けれど。  その静けさの中、何かが聞こえた。  カイはその長く尖った耳をそばだてる。  かすかではあるが、確かに聞こえてくるそれは、幼い少女の泣き声のようだった。  こんなところに、なぜ。  だが、その疑問は一瞬にして解けた。  狭間に姿を消した調和者アルタミラは、少女の姿のまま幾星霜を生きながらえているのである。 「……アルタミラ殿? 」  カイは呼びかけるが、無論返答はない。  この泣き声は、どこから聞こえてくるのか。  カイは強い意志を持ってその声を追う。  と、どうだろう。  それまで何もなかったはずの空間に、崩れかけた神殿が現れた。
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