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「お前が智紀さんのことが好きなのは知ってるんだけどさ」
「えっ……!」
俺の肩を掴む手に力がこもった。
「気付かない訳ないだろ! 自分の好きな人が誰に好意を寄せてるかなんてさぁ!! 智紀さんはともかく、たぶんオジさんは気付いてるよ!」
「親父も?」
「だって、お前と智紀さんが話してる時のオジさん、めちゃめちゃ目が怖いんだぞ! あれは嫉妬の目だよ!!」
「そんなこと……」
「あるんだよ、バカ!!」
思い切り叫んで思っていたことをぶちまけた和馬は、俺から手を離して座り直した。
今度は俺から切り出してみる。和馬の気持ちはよく分かった。だから理由が知りたかった。
「……いつから?」
「……小3のとき、下校途中にお前が坂でコケて、膝擦りむいて泣いてるのを見たときから」
顔を赤くし唇を尖らせ斜め下を向きながら語った理由は、なかなか変態だった。親友の新たな一面を見た気がした。
「……うーわ、悪趣味」
「うるせぇな! 夕陽に照らされたお前の泣き顔にキュンときちゃったんだよ!!」
「そもそもあれは、お前がバッタ持って追いかけてきたせいだろ……」
「それは、悪かったと思ってる」
また暫く沈黙が続いた。
「……で、お前は俺と、結局どうなりたいわけ?」
沈黙を破ったのは俺の方だ。俺の問いに和馬は目を見て答えた。
「俺と付き合ってほしい」
見たことのない真剣な表情に思わず胸がドキッとする。和馬のことは嫌いではない。むしろ好きだ。でなければ、幼馴染みといえどもこんなに長く付き合ったりはしない。でも、その“好き”がライクなのかラブなのか考えたことすらなかった。俺の中では和馬は和馬だったから。
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