序 「日本の沈んだ日」

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熊谷工業本社の裏口、実際フレームの試作機体の製造を行なっている倉庫に5人の姿があった。 「まさか、本人が子供を連れてくるとは思わなかったよ、秋山さん」 「これでも父親をやっているんでね」 大柄で髭ズラの男に秋山と呼ばれた男は右手と左手を小さな女の子にしっかり握られていた。 「感心、感心。それで、パパの後ろに隠れているのが息子だな?」 「ああ、ほら公明。熊谷のおじさんに挨拶するんだ」 秋山が体を反らし、息子を巨人の目の前へ送り出した。 「あ、秋山公明です。好きなものはお姉ちゃんの作るハンバーグです」 「そうか、ん?秋山さんこの子の上にお姉さん…」 熊谷が秋山に視線を送ったが彼の瞳は乾いたガラス玉のよう、刹那目を閉じてしまう。 「家政婦さんの料理が好きなんだよな。公明もメグルも」 「…ふむ、そうか。まぁ、立ち話もなんだからな、早速工場を案内するよ」 「よろしく頼むよ」 熊谷が重い扉を押し開けていく。 子供達の背中を守る形で秋山は工場内へ踏み込んでいく。 バッと、熊谷の大きな腕が秋山の胸の前に振り下ろされた。 「秋山中将、協力に感謝するよ」 「今は中将ではない」 「こっちはいつだってビジネスだ、お客様にはしっかりお礼をしないと」 熊谷の大きな顔が更に大きく威圧的になる。 「さすが戦争屋の親分だな。冬馬と天秤にでもかけているのかな?まぁ良い。今日は楽しませてもらうよ」 熊谷の不敵な笑みを確認し、胸の前に出された腕を強く払っていく。
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