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土手の桜はもうすっかり終わってしまっていた。4月上旬。今日はとうとうやって来た始業式。
私にとっては運命の日と言ってもいい。だって大イベント『クラス発表』があるもの。去年はもう最悪な1年だった。圭も佑果もいなくて、誰とも話せなくて、休み時間には圭と佑果が交互に会いに来てくれる日々……!
もうあんな思いは絶対いやなの。今年は圭か佑果か、出来たらふたりと一緒のクラスになりたい。だって修学旅行もあるし、知らない人と班になって京都散策なんて、そんなの辛すぎる……。
「だーいじょうぶだって鈴菜。今年は絶対一緒のクラスになれる。昔やったでしょ? 『同じクラスになれるおまじない』」
不安に押しつぶされそうになりながら通学路を行く私に、優しく声をかけてくれるのは佑果。私より20センチ以上高い所にあるその顔が、いつも通りににかっと微笑む。
「あれ、あたし昨日やったのよ。ピンクの紙にハートを書いてー、一緒のクラスになりたい人の名前を書いて、枕の下に敷いて寝る! 4年生の時うまくいったよね。だから今回も絶対大丈夫!」
「いや待てよ佑果。お前、あれは確かさー」
私の前を歩く圭が、それよりもっともっと高い位置にある顔で私を振り返って言う。短い黒髪。陽に焼けた顔は女の子に、とってもモテるイケメン。
「5年の時にばらばらになって、やっぱダメだって話になったんだよ。なっ、鈴菜。次の6年でも3人ばらばら。実は俺もやってみたんだぜ。次の朝、母親に見つかってさー。あんたおまじないとかすんのっ!? つって爆笑されたよ。やな思い出」
「やだ圭! 言わなくていーでしょそんな事っ。鈴菜が不安になっちゃうじゃない。空気読みなさいよ無神経ねっ!」
「だって佑果、そんな科学的根拠のない事で鈴菜に期待もたす方が残酷だろがっ。だから大丈夫なんだって! クラス別になってもちゃんと顔見に行くから! 修学旅行も別の場所に行く訳じゃないんだから、ひとりになんかさせないし……!」
「あ、ま、待って圭、佑果! 大丈夫、私大丈夫だから……」
言い合いになってしまいそうなふたりを、私は慌てて仲裁する。これじゃ朝の通学路で、また注目を浴びちゃう……!
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