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「同じクラスになれてもなれなくても、私大丈夫だから。……もう高2だもん。いつまでも、ふたりに迷惑かけられないし」
「す……鈴菜」
「コミュ障はもう、卒業しなきゃ。私だって、本当はそう思ってるの」
――圭と佑果はどこに行っても目立つ人気者。
そんなふたりに守られて、私は16年間大事に甘やかされてきた。内気で人見知りで身体が弱くて、でもふたりの友達だからいじめられずにきた私。
普通だったら間違いなくいじめの対象になっていた。だって挙動不審ですぐに倒れる。体育は全部見学で趣味は読書。友達作りは苦手だし口数も多くない。
でもいつまでもこのままでいいはずないわ。私は大人にならなきゃいけない。だってもう高校2年。『岸田家』なんて言われて、圭と佑果の間でぬるま湯に浸かってきた。本当はずっとふたりの間に隠れていたいけど、でもそれじゃいつまでたってもコミュ障から卒業できないもの。
「……だから大丈夫。心配しないで。私、もうひとりでも大丈夫だから……」
ふたりは気まずそうに口をつぐんで、そして私達は並んで校門をくぐる。校庭を行く私達……正しくは圭と佑果に、すれ違う人達が次々に声をかけてくる。
「ゆーか! おっはよ! 一緒のクラスになれるかなっ。今日から、男子新しいコーチ入るらしいよっ」
「おお圭、おっす。きーたか新しいコーチ。インカレベスト4らしいぞ。しかもすんげーイケメンだってよ。おめーライバルじゃん。クラス分け、見に行こーぜ」
わらわらと私達に寄ってくる人並み。私達……じゃなくて圭と佑果は、どこに行っても人気者。体育館前の掲示板につく頃にはちょっとした一団が出来ていて、佑果が手を握ってくれるから私はその真ん中にいる。
「さあ鈴菜、クラス分け見るわよ。一緒のクラスになれますように」
「あー……意外にきんちょーするな。3人、一緒になれ……る、あ、あああっ!」
人混みの中、頭ひとつ飛び出した圭が大きな叫び声を上げる。私は怖くて目をぎゅっとつぶる。右に佑果の手を、左に圭の制服の裾を握って。
「きゃあ! 鈴菜、あたしたち、おんなじクラスよ! 圭とあたしと鈴菜! 3人が一緒のクラス! やったあ、おまじない効いたわ!」
「まじないの真価は分からんけど良かった! 鈴菜、良かった一緒のクラスだ! 佑果、鈴菜、1年よろしくなっ!」
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