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ふたりは渦の真ん中で私に笑いかける。そんな私達に、周囲の人達もおめでとう! なんて言ってくれて。
私達『岸田家』はもう学校の名物。男子バスケ部のエースで学校一モテる圭と、女子バスケ部のエースで学年を越えて人気者の佑果。
そして内気でいるかいないか分からないちびの私。なぜかひっついているこの3人。私は圭と佑果がいないと、この学校で息をする事すら出来ない。
「……ん? 鈴菜、大丈夫か? 顔色が悪いぞ。鈴菜、おい鈴菜……!」
……ああ、良かった、本当に良かった。今年はふたりと一緒にいられる。京都のお寺も一緒に見られる。嬉しい。私はあんまりにもほっとし過ぎて。
過剰な安堵で動悸がしてくる。そして久しぶりの人いきれ。不安からの大きな安堵、その落差でめまいがして、胸が、胸が痛くて……。
「だめだわ、みんなどいて! 圭、早く保健室! 道を開けてっ! 鈴菜が倒れたから!」
……ああ、また身体がいう事をきかない。私は途切れる意識の中で思う。
こんなに弱くてつまらない私。輝く圭や佑果とは、対極にいる暗く弱い私。
どうしてふたりはこんなに優しくしてくれるんだろう。男子にも女子にも人気のあるふたり。私なんかと過ごさなくても、いくらでも友達はいる。私なんてなにもいいところのない人間なのに。
……変わらなくちゃ。それだけは分かる。ふたりに置いてかれたくないの。
だから私は、変わらなくちゃいけない……。
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