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第2話
生まれつき心臓に問題があって、3歳の時に手術を受けた私。
普通ならその手術で90パーセント以上の人が完治して、マラソンや水泳は出来ないまでも、日常生活は問題なく送れるようになるという。私もお医者さんにそう言われて、そうなるんだと思って成長した。きっといつか、普通の子みたいにたくさん笑ってお友達をいっぱい作るんだって。
でも私の心臓はいつまで経っても役立たず。ちょっとびっくりすれば痛くなるし、少し駆け足になったり重いものを持っただけで苦しくなる。
その度にこうやって保健室に運ばれる。192センチの圭が152センチの私を、子供みたいに抱っこして。175センチの佑果はそのとなりで、お母さんみたいに心配そうな顔をする。
私はほとんどふたりに生かされてる。お医者さんはいつも言うもの。
「君の心臓に、もう大きな問題はないはずなんだ。心因性と言ってもいい。でも焦る必要もない。頼れる人がいるなら頼って、少しずつ強い心になっていけばいい……」
でもそれじゃだめなの。私達はもう16歳。いつまでも子供じゃない。いつまでも3人ひっついてはいられない。
圭と佑果は人気者。私はそのふたりを独占している。たまにこんな言葉が聞こえてくるもの。
「なんであの人あの位置にいるの?」
「『岸田家』謎の結束だよな。なんともまあ似てない親子」
「逆にもうやばいよね。守られヒロイン演じてる? 『岸田夫婦』いい人だから」
……そんなのは、もういや。私は強くなるの。強くなって、自分ひとりの足で立って。
出来るなら恋がしたい。小さい頃にした大失恋以来、固まってしまった私の心。ほぐして、新たな恋をする事が出来たら……。
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