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あははっ。あははは。はっは、ふっ、はは。
ふふ、ふ、ふふふ。あっはははは、ははは。
俺の笑い声が狭い体育館に響き渡る。彼らの芸も残り数十秒というところだ。
誰も笑わない舞台。俺だけは賞賛の意を込めて大声で笑ってやる。誰の文句も受け付けない。
「おい、いい加減にしろ!」
俺は監視員に両腕をがっしりと掴まれた。
あいつの舞台が終わるまでここを出てたまるものか。抵抗する俺を監視員が引き摺っていく。俺は小さくなっていく息子の姿を目に焼き付けながら、腹の底から笑った。滴る涙が俺の顔を顎の下までぐっしょりと濡らしていた。
ちょうど体育館の出口まで引き摺られてきたところで、あいつらの舞台は幕を閉じた。閉まりかけたドアの向こうで揃ってぺこりと頭を下げている二人組に向かって、俺は最大限に声を張り上げた。
「お前ら、最高だったぞ!」
ゆっくりと静かに閉まったドアの向こうであいつがどんな顔をしていたのか、俺には知る由もない。しかし、これから待ち構える苦痛の日々が屁でもないほどに、俺の心は喜びと安堵で満たされていた。
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